"photobashiru" ...

写真を中心に、ほとばしってるものを。

『ルドルフとイッパイアッテナ』

小学校の頃に読んで印象に残っている本の中に
ルドルフとイッパイアッテナ』(初版 1987年)がある。
小学生だか中学生だかの頃には、
テレビでも、アニメというか朗読劇に近かったように思うが、
静止画に音声をつけたような形で放映されたことがあったように思う。
恐らく本で読んだのが先で、とても好きな作品であったし、
懐かしさも相まって、食い入るように見ていたら、
母親に「そんなに面白いの?」とたしなめられた記憶がある。
数年前に読みたくなったので本を購入したのだが、
しばらく読む機会が作れずにそのままになっていた。
いつの間にか本を読む時間自体が無くなってきて、
心労が募ってきたので、軽い本でも読もうという気になり、
ようやく読むことができた。
この作品はシリーズ化されていて、当時の時点で第2巻の
『ルドルフ ともだち ひとりだち』(初版 1988年)
までは出ていたはずだが、なぜだか読まずに終わっていた。
それから、いつの間にか、
第3巻『ルドルフと いくねこ くるねこ』(初版 2002年)
第4巻『ルドルフとスノーホワイト』(初版 2012年)
と続いていて、今年2020年には更に新作の
第5巻『ルドルフとノラねこブッチー』(初版 2020年)
が出た。
タイミングも良かったので、5冊続けて読んだ。

この本の主人公と作者は、字を読み書きすることができる
ルドルフという黒猫である(という設定)。
私は語りのスタイルの本が割と好きで、
それがこれらの本をより魅力的なものに感じさせる。
対象は小学生中級となっているのだが、
大人が読んでも十分に楽しめる(と少なくとも私は思う)。
ルドルフはまわりの猫に一目おかれるような性格をしているのだが、
人(猫)付き合いで抜けたところがあって、子供扱いされることがよくある。
まわりの猫や犬との付き合いを通じて成長していく様子が描かれている。
ルドルフが迷うのは、他者への思いやり、
他者の思いを踏まえた上で自分がどのように振る舞うべきかということである。
こういったことは、日常では照れくさいし、
ちゃんと詳しく教えてくれる人はなかなかいないけれど、
ルドルフの仲間たちはそれぞれのやり方でそれを教えてくれる。
だからこれらの本は、
私にとって人生のバイブルと言ってもいいくらいの本なのである。
もちろん、大人になった今読んで初めて理解できた、
なんてことはないけれど、そういう大切なことは、
理解した上で何度も何度も反芻を繰り返して、
少しずつ自分も実践できるようになっていくものだと思う。
頭では分かっていても、その時の自分の精神状態や身体の調子なんかで、
いつでも理想的な振る舞いができる訳ではない。
後になって、あの時はこう言えば良かったとか、こうすれば良かった、
なんてことは今でもよくあることである。
以前より少しはましになってきたのかもしれないが、
思いやりが足りないと思われるようなことを、
今でもやってしまっているのだろうな、と思う。

いつだったか、母親に一度、
「だからあんたは馬鹿だって言うのよ」と言われたことがある。
今でも相変わらず、「馬鹿のままだなぁ」と思う。
ルドルフは拾ってきた「ポケット版 ことわざ辞典」を愛読しているが、
「馬鹿に付ける薬はない」と「馬鹿は死ななきゃ治らない」も
きっと掲載されていることだろう。