"photobashiru" ...

写真を中心に、ほとばしってるものを。

S 君との思い出

子供の頃の人付き合いというのは、何か特別なものだと思う。大人になると、仕事の関係とか、何かしら自分が持っているベースと共通項のある分野の人と関わる機会が多くなりがちである。私の場合、そこに何か物足りなさを感じているのだろうか。バーに行ったり、Twitter で他分野の人をフォローするというのは、もしかすると新しい刺激を求めているのかもしれない。子供の頃の私は、無口で、影の薄い存在だったと思うのだが、そんな私でも付き合ってくれた人はいたのである。生活圏内にたまたま居合わせた同じ年代の子供同士が一体何をきっかけに仲良くなるのだろう。きっかけは全く覚えていないのだが、見た目とか、他の子供とのやりとりか何かを見ているうちに、気が合いそうだと判断するとお互いに話をしてみたいとか、一緒に遊びたいと思うのかもしれない。そういえば、「今日学校が終わったら一緒に遊ぼう」とか普通に言っていたように思うが、年齢を重ねるにつれて、そんな気軽には人付き合いをしなくなったようである。

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Camera: PENTAX K-1, Lens: smc PENTAX-D FA MACRO 100mm F2.8 WR

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Camera: PENTAX K-1, Lens: smc PENTAX-D FA MACRO 100mm F2.8 WR

S 君は私の低学年の時に出会った友人で、私にとっては存在感の大きな人である。S 君は絵を描くのが好きだったし、うまかった。一度、先生が何か話している時に(彼は一番前の右端の席に座っていたのだが)、先生の話を全く聞かずに、自由帳に絵を描いていた。それが先生に見つかり、先生は自由帳を取り上げ、クラスの皆に向けて「こんなものを描いている」と見せたことがあった。そこには、バルタン星人のような、カニの手を持ったようなオリジナルのキャラクターが色付きで描かれていた。すぐさま、私の後ろの方から「うめえ。」という感嘆の声が漏れた(私も心の中で同じことを思った)。その後、先生が少し慌てたようなそぶりで自由帳を返したのは少し面白かった。彼は絵を描き慣れているせいか、技術的にもうまいのだが、目の付け所、発想が奇抜なところもあった。授業で恐竜の絵を描いたようで、それが教室の後ろに張り出された。ほとんどの人は、首の長い4つ足の恐竜を左向きに描いている。きっと誰かが描いたのを周りの人が見て真似するのだろう。そんな中で、(恐竜の種類は同じなのだが)S 君は恐竜の首をグッと曲げて後ろを向いているような格好になっている。これを見た時にたいそう感心したのを覚えている。

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Camera: PENTAX K-1, Lens: smc PENTAX-D FA MACRO 100mm F2.8 WR

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Camera: PENTAX K-1, Lens: smc PENTAX-D FA MACRO 100mm F2.8 WR

それから、S 君は話がうまい。一緒に登校していると、私が喋らないものだから、S 君がしゃべることになる。今となってはどんなことを話していたのか思い出せないのが非常に残念なのだが、彼の話しぶりが私にとってはツボだったようで、ずっと笑い続ける羽目になる。そんな私を見て「〇〇は笑ってばかりだな」などと言ってくるのである。S 君が私の前の席だったことがある。小学校の時は必ず隣の席は女の子だったのだが、S 君は女の子に対しても変わらずお喋りをする。その女の子も静かな子だったのだが、やはり笑っていて楽しそうである。一度、その子とどんな話をしているのかを聞いていたことがある。なんだか艶のある、エロとまではいかないまでも、まるで恋人にでも語りかけているような雰囲気があった。それを盗み聞きしながら、なるほどなと思った記憶がある。しばらくして、私が聞き耳を立てているのに気付いたのか、S 君が振り返って少しの沈黙があった。

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Camera: PENTAX K-1, Lens: smc PENTAX-D FA MACRO 100mm F2.8 WR

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Camera: PENTAX K-1, Lens: smc PENTAX-D FA MACRO 100mm F2.8 WR

私は虫取りとか、生き物を捕まえたりするのが好きで、小学校に入る前からそんなことをして遊んでいたのだが、S 君も生き物が好きで、よく一緒にカブトムシの幼虫を取りに行ったりしたものだった。この分野に関しては、私の方が経験も積んでいたようだったので、その点が S 君にとって魅力的に映ったのかもしれない。正規の通学路とは別に "近道" と呼んでいた、林の中を通り抜けていく道があったのだが、よくこの道を通っていた。一度、S 君のお兄さんとその友人と登校したことがあり、近道だから大丈夫ということで道草をしていたら大遅刻したことがあった。ホームルームの時に二人揃って立たされて、先生に理由を問い詰められていたのだが、S 君が何も言わずに黙って立っているのには、どういう気なんだろうと思った。私は耐え切れずに、泣きながら遊んでいたことを白状してしまったのだが。ある時、帰る途中で近道を少し探検していて、池のようなところを見つけて、カエルの卵やオタマジャクシをとって S 君のお母さんに見せたことがあった。どこでとってきたのか聞かれたので答えてしまったのだが、ちょっと後に、その池が埋め立てられて無くなっていた。S 君の父親は土木系の仕事だったようなので、もしかすると、心配して埋め立ててしまったのかもしれない。その時はちょっと残念で、何でもしゃべるものではないなと思った。S 君の家にはよく遊びに行っていて、S 君のお母さんとはプールとかスケートにも一緒に連れて行ってもらったりしたのだが、今考えると、面倒見の良い素晴らしい人だったなと思う。

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Camera: PENTAX K-1, Lens: smc PENTAX-D FA MACRO 100mm F2.8 WR

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Camera: PENTAX K-1, Lens: smc PENTAX-D FA MACRO 100mm F2.8 WR

授業参観の日のホームルームの時に、S 君が普段はそんなことはしたことがないのに、私のランドセルにエルボーをしてへこませるような仕草をしたことがあった。なぜそんなことを始めたのかよく分からなかったのだが、私の反応を見ようとしたのかもしれない。私は特に怒ったりもせず、されるがままにしていたのだが、家に帰って父親に何であんなことをされて黙っているのだと怒られた。薄々怒られそうだなとは思っていたのだが、そんな手に乗る私ではなかった。

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Camera: PENTAX K-1, Lens: smc PENTAX-D FA MACRO 100mm F2.8 WR

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Camera: PENTAX K-1, Lens: smc PENTAX-D FA MACRO 100mm F2.8 WR