小さい頃に通っていた絵画クラブの遠足で山梨に行ったことがある。
塩山駅で降りて、タクシーで旅館に行ったのだが、
途中どこかで桃を食べさせてもらったような記憶がある。
この時食べた桃がたいそう美味しかったので、
私としては山梨といえば桃だなという印象が強いのだが、
一般的にはブドウをあげる人が多い気がする。
泊まった旅館の近くには、一之釜という滝があって、ここで写生をした。
子供の頃なので、写生よりも遊びたいと思った記憶がある。
絵を描き終えて釜の近くに行くと、
ミヤマクワガタが水面にプカプカ浮かんでいた。
まだ、生きていたので家に持ち帰り、飼って、死んだ後は標本にした。
当時住んでいた千葉では、ノコギリクワガタが多かったが、
この辺りではミヤマクワガタがいるらしい。
この滝は岩がえぐられたようになっていて、見る場所によって姿が少し変わる。
写真で捉えらるのはその一面である。水の飛沫が飛んできて、たいそう気持ちが良い。
この滝の周りには、灰色の大きな岩がゴロゴロしていて、
小さな滝もあり、すぐ近くで観れる。
人がいなければ、これらをゆったり眺めたりして過ごすのも、楽しいものだ。
後で、近くの果物の販売所に立ち寄り、桃を1つ買った。
ついでに雑談をしていると、
どういうわけか最近一之釜を観にくる人が増えていると言う。
今見てきたところだと言うと、「ただの滝だったでしょ」と言われたが、
個人的には結構お気に入りの場所である。
家族連れが来たので引き返すことにしたが、結構ゆっくりできた。
平日だったのが、良かったのかもしれない。
吊り橋を渡って、入り口まで戻る。
昆虫を見つけると、マクロ撮影をしたくなる。
写真の中では、マクロ撮影が一番好きだ。
変わった絵が出てくるし、撮影に集中力がいるので没頭している感じになれる。
蜘蛛の巣や植物を撮るときには、風の動きに合わせる必要もある。
ちょっとした空気の動きでピントが外れてしまう。
蜘蛛の巣で粘っていると、ボトッと音がして、見るとナナフシが落ちてきていた。
マクロ撮影をしていると、自然と一体になったかのような感覚になる。
そうしているうちに、撮りたいものが次々と現れてくる。
昆虫もずっと追いかけていると、警戒心が薄れるのか、
あまり逃げなくなるのが不思議である。
昔泊まった治郎兵衛荘は、今はもうやっていないようだ。
夜にはイノブタ鍋が出たのだが、遠慮しがちな子供だったので、
ろくに肉を食べないうちに、一緒にいた女の子達に全て食べられてしまった。
もう一度、一人で思う存分、食べてみたいと思っていたのだが...。