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写真を中心に、ほとばしってるものを。

静岡 河津七滝 No.2(2022. Apr.)

前回に引き続き、河津七滝(かわづななだる)から。
この辺りの地形で特徴的なのが柱状節理(ちゅうじょうせつり)が見られることである。節理というのは、岩体に規則的に発達した割れ目のことで、マグマが 700-1000 ºCくらいに冷えて岩石になった後、さらに冷却する過程で体積が収縮することにより割れ目ができるという。したがって、この構造は火成岩によく見られる構造である。

節理 - Wikipedia

Camera: PENTAX K-1, Lens: smc PENTAX-DA☆ 1:1.4 55mm SDM

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平面に隙間なく割れ目を作るとしたら、どんな形が出来やすいかに関係するのだろうが、ハニカム構造のように六角形ならば平面を隙間なく埋められる。実際、六角形の形が多いが、五角形や四角形の場合もあるそうである。サッカーボールに五角形があるように、岩面が球面だった場合は、六角形以外ができるのかもしれない。

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節理の割れ目は、冷却面に対して垂直に成長するという。これは容易に想像ができる。岩石の表面の冷却が一番速いので、まずそこに割れ目ができる。割れ目がある場所とない場所では、すでに割れた部分は小さな隙間がある訳だから、優先的に割れが進行する。冷却が岩の内部に進行するに従い、表面にできた割れ目に沿って割れが進行して柱状の割れ目が成長する。ガラス細工で、ガラスに傷をつけてから、焼玉を切りたい延長線上のガラスに触れさせてやるとガラスの体積が変化するので割れが起きる、これを利用してガラスを切っていく「誘導切り」という手法にも原理が少し似ている。

Camera: PENTAX K-1, Lens: smc PENTAX-DA☆ 1:1.4 55mm SDM

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そうやって出来た柱状節理の例が下に見られるようなものである。割れが放射状に広がっているが、それぞれの柱はまっすぐに伸びている。地層が圧力を受けて曲がったのではなく、冷却された岩の表面が湾曲していたことでこのような形になったのだろう。

Camera: PENTAX K-1, Lens: smc PENTAX-DA☆ 1:1.4 55mm SDM

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六角形状の構造は自然の中でしばしば見られるものだが、柱状節理を見ているとべナール·セルを連想させられる。例えば、味噌汁が冷える際に柱状の対流が起こり、それによって六角柱の部分構造ができる。柱状節理の場合は、対流が生じているわけではないので原理は異なるが、微視的な初期条件からその後の巨視的な状態が決まってくるという点に類似性を感じる。

ベナール・セル - Wikipedia

ベナール・セルを撮る | 麦 Baku

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話が更に脇道にそれるが、べナール·セルは、温度差のある流体に関するもので、ウロコ雲や雲海に見られることのある六角紋が、その例だという。空気の対流は、温められた気体の体積は大きくなるため、周りの冷たい空気に比べて密度が小さい。それによって浮力が生じて、温かい空気は上昇する。逆に、冷やされた空気は密度が大きくなるので下降する。雲というのは、空気中の水分が気体から微小な液体粒子になってできると考えられるので、このような対流の過程で雲ができた時にウロコ雲はできるのだろう。

Camera: PENTAX K-1, Lens: smc PENTAX-DA☆ 1:1.4 55mm SDM

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関連して、煙突というのは、このような空気の対流を効率的に起こすための装置で、温められた空気は煙突の壁で外界と遮られているために高温が維持され、外界に比べて密度が高くなる、すると、煙突内部では浮力が生じ、それによって煙突下部では圧力が低くなる、この外界と煙突下部との圧力差により煙突下部から外気が吸い込まれ、上部からは上昇した空気が排出される。このような現象は煙突効果と呼ばれる。

煙突効果 - Wikipedia

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たばこの煙をぼんやり眺めたり、川の流れや波の満ち引きから目を離せなくなったり、流体の運動というのは、つい見惚れてしまうところがある。川から水蒸気が立ち昇っているのが見える。温泉だろうか。

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渓谷を散策するというのは、私にとってはちょっとした旅には定番の行事みたいなものになっているが、渓谷に行けば川や滝がある。旅に出たなら、滝を見ずには居られなくなる、というようなところがあって、流体を眺めるという行為にはやはり心を癒す何かがあるとしか思えない。

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水が綺麗なことが関係しているのか、静岡はわさび栽培発祥の地ということで、本わさびをすりおろして、鰹節をかけたご飯にかけて食べる「わさび丼」が名物になっている。普段口にするわさびはほとんどが西洋ワサビ(ホースラディッシュ)を着色して人工的に味付けしたものらしいが、言われてみれば、改めて味わって食べたわさびの味は大根に似たところがある。本わさびを食べたのは初めてかもしれない。本わさびの辛味は脳天を突き抜けるような感じが心地よく、普段食べているわさびの鼻の頭にツーンとくる感じとは少し性質が違う気がする。

Camera: PENTAX K-1, Lens: smc PENTAX-DA☆ 1:1.4 55mm SDM

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改めて訪れてみると、静岡には名物がたくさんあることに気づいた。水がうまい、富士山、お茶の産地、というのが以前の静岡のイメージであったが、それは静岡のほんの一部分に過ぎなかった。そして、静岡の様々な魅力は、その特異な地質的な特徴に基づいていると言っても良いかもしれない。伊豆諸島が本州に衝突し沈み込むことで、駿河湾相模湾において海底の窪みが深くなった。そのために、深海魚の金目鯛がとれるのもその恩恵である。

Camera: PENTAX K-1, Lens: smc PENTAX-DA☆ 1:1.4 55mm SDM

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今回はあまり見れなかったが、桜も実は色々と見所があるようである。