"photobashiru" ...

写真を中心に、ほとばしってるものを。

パイプ

 パイプたばこを吸うようになって三年程経っただろうか。それでもまだうまく吸えていると言える自信はない。うまく吸うのに熟練が必要なのだ。道具を使うので、メンテナンスなど他の喫煙方法と比べると手間は確かにかかる。それでもパイプにはパイプの良さがあるし、手間も含めて楽しみと考える人が多いのではないだろうか。

 最初の難関、それは葉をボウルに詰めることである。これはやってみないことには分からない。固く詰めすぎると吸い込みづらくなる。よく言われるのは、最初はやさしく、徐々に固く詰めるという方法であるが、いろいろ試してみてよい詰め方というものを会得するしかないだろう。いつの間にか何気なく詰めるようになったけれど、今だにもっと良い詰め方があるかもしれないという考えは拭いきれていない。

 パイプに関する一番の難関はその吸い方である。まず、リップ(パイプの口)から口腔内に空気を吸い込みながら、詰めた葉の一番上をあぶってやる。すると、どういう訳かむくむくと葉が膨らんでくる。この時、あぶられた葉の表面は炭化されて黒くなる。この盛り上がった炭化された葉を、タンパーと呼ばれる釘の頭のような形をした道具を使って押しつけ平らに整えてやる。これでようやく喫煙の準備が整った。再び炭化された葉に火をつける。この時も吸い込みながら火をつける。パイプは基本的に口の中でふかすだけなので、肺に入れないように口の中で舌をうまく使って空気の出し入れをする。葉は湿気を帯びているために火がつきにくいので、点火時は葉に火柱が立つくらい激しくした方が良い。火がついてからは打って変わって繊細な作業になる。なるべく温度が上がらないように、しかし、火は消えない程度の絶妙な速度で吸ったり吐いたりを繰り返す。空気の流れを少しでも止めると、簡単に火は消えてしまう。少しおしゃべりでもしようものならもう火は消えている。だから、パイプは一人で黙って吸うものだと思うのだ。このような性質からパイプは瞑想の供に最適である。

 慣れない頃に必ずするのが舌の火傷である。火が消えるのを恐れて速く吸い続けていると、熱い煙が絶えず舌に当たって火傷してしまう。さらに、ボールが熱くなりすぎてしまって、手で持っていられなくなる。こうなると火傷で舌はひりひりするし、熱い煙はいろいろな雑味を含んでいるので、旨い煙を吸うことはできない。ボールが熱くないというのは一つの目安であり、熱くなってきたと思ったら一旦休んだ方が良い。吸う速度が速い時に起きるもう一つの問題は、葉に含まれている水分が水蒸気になりきれないことである。そうすると、ボールの底に水分がたまってきて、ジュルジュルと口の方へ流れてくる。これは空気の流れを阻害するし、口に入ればとても不快なものである。無意識に舌をうまく使って適度な速度で吸えるようになると、ようやく思索に没頭することができるようになる。