西沢渓谷の入り口から、甲武信ヶ岳に登れる。
名前の通り、甲州(甲斐国)· 武州(武蔵国)· 信州(信濃国)にまたがった、
つまり、山梨県 · 埼玉県 · 長野県の三県の境にある山である。
名前の由来については、拳に似ているからという説もあると言う。
標高は 2,475 m で、西沢渓谷入口から頂上付近の甲武信小屋までの
標高差は 1,260 m である。
長野県側の毛木平からのルートは日帰りが可能らしいが、
山梨県側の西沢渓谷入口からのルートは、片道 6 時間程度とされ、
日帰りは厳しく甲武信小屋で一泊するのが一般的らしい。
不安もあったが、折り返しのタイムリミットを決めておいて、
行けるところまで登ってみることにした。
登り始めると、丁度良い長さの木の枝があったので杖として使うことにした。
これは拾っておいて本当に良かった。
しばらく行くと、いきなり斜度 60º はありそうな、斜面にぶち当たる。
開始早々に、やはり引き返そうかと迷う。
杖や木に掴まりながら、なんとか登りきる。
きつい登りがひと段落すると、散歩道のような場所がしばらく続く。
そして、またきつい登りにぶち当たる。
これの繰り返しである。
水 2 L、食料、カメラという軽装で登ったが、それでもかなりきつい。
きつい登りにぶち当たるたびに数を数えていたが、
上に登るほどに、散歩道の長さは短くなり、
10 の試練くらいまでは数えられていたものの、
それ以降は分からなくなってしまった。
ピンクのテープを頼りに登る。道が分かりにくくなってくる。
ある程度の高さまで行くと、雲なのか霧なのか周りが白くなってくる。
また、植物の種類も少しずつ変化している。
そして、崖崩れでも起きたような場所を横目に進む。
バランスを崩したら大変なことになりそうだ。
途中にはどの地点にいるのか、標識がほとんどないので、精神的に追い込まれる。
途中で持ってきた桃を食べて、回復する。
桃の匂いのせいか、ハエがうるさい。
木賊山(とくさやま) • 破風山(はふさん)• 戸渡尾根(とわたりおね)
の看板が出てきて、ようやくある程度まで来たことに安心する。
しかし、ここから甲武信小屋までは結構な距離がある。
途中で、木賊山の三角点を通過するが、特に展望があるわけではない。
そして、ようやく甲武信小屋に到着する。
ここに至るまでの経路は、近丸新道と徳ちゃん新道の二つの道が
戸渡尾根に合流するようになっている。
近丸新道は、古いルートなのか危険とあるので、徳ちゃん新道から登る。
甲武信小屋には徳ちゃんとその奥さんと思しき人が住んでいる。
この道を切り開いたり、生活物資を運んだり、という生活を想像をすると、
とんでもない人達だなと思う。
小屋から頂上までは、約 20 分程度、ここまで約 4.5 時間かかったが、
結構ハイペースだったため、かなり疲れた。
しかし、座ってしまうと、疲れがどっと出ることは分かっていたので、
立ったまま荷物を降ろす程度に休むにとどめる。
頂上からは、周りの山が見渡せる。
頂上には 20 分位いただろうか、小屋に戻りまた少し休憩する。
小屋に泊まって朝日を眺めるのも良さそうだ。
降りるルートには、破風山 • 雁坂峠を通るものがあるが、今回は時間がないので、
来た道をそのまま引き返す。
降りるのは、登りよりは楽だが、疲れがたまっているので、
エネルギーをこまめに補給しながら降りる。
途中雨が降ってきて、しばらく雨宿りをする。
降りるときに一番きついのは、やはり初めの急斜面だった。
下りは約 5 時間、全部で 10 時間位かかった。