"photobashiru" ...

写真を中心に、ほとばしってるものを。

『写ルンです』の条件

単焦点広角レンズのカメラと言えば、富士フィルムの『写ルンです』がある。
近くのものから遠くのものまでピントが合っているようにすることを、
パンフォーカスと言うが、「シャッターを押すだけで撮れる」を実現するために、
そのような条件(1 m から無限遠までピントが合う)が設定されている。
被写界深度を深くするには、広角レンズを使い、絞れば良い。
写ルンです』では、焦点距離 32 mm の広角レンズを使い、
絞りは F = 10 まで絞られている。
フィルムの ISO は 400–800、
シャッタースピード(SS)は手ぶれが起こりにくい 1/140 – 1/125 になっている。
私の場合、被写体が完全に静止した状態ならば、
手持ちでかなり慎重にすれば 1/40 くらいまでは手ブレせずに撮れなくもないが、
手軽に撮る場合には 1/125 というのは妥当なシャッタースピードである。
カメラについて少し分かってくると、
シャッターを押すだけで撮れる『写ルンです』の発想に感心する。

写ルンです』は暗い場所で綺麗に撮れないという欠点があるが、
フルサイズ一眼レフ機に 焦点距離 30 mm くらいの広角レンズをつければ、
写ルンです』の条件に近づいて面白いかもしれない。
画角と絞りは固定で、ISO やシャッタースピードは調整して良いことにすれば、
暗い場所での感度や解像力の点では『写ルンです』よりも優位である。
GR はもともと広角レンズがついたコンデジであるので、
まさにそんな発想なのかもしれない。

と言ってみたものの、
実際には『写ルンです』の条件で写真を撮るということ自体が
ハードルが高いことだと思う。
パンフォーカスだと、ボケを利用した絵作りができないので、
のっぺりとした印象の絵になりがちで、だいぶ絵作りの幅は制限される。
室内の撮影のような暗い条件ならば、
 F10 まで絞っていては適切な露出にした時に被写体ブレが生じてしまうだろう。
絞り開放の方がシャッタースピードは稼げるし、
オートフォーカスでピントは合わせられるので、
パンフォーカスにするためにわざわざ絞るメリットがない。
写ルンです』で印象的な絵を撮るのが難しい主な原因は、
その画角の活かし方 · 撮り手のセンスが効いてくるからだろう。

デジタルカメラの使い方が慣れていない人に撮影を頼む時は、
パンフォーカスの条件を適用するよりは、
フォーカスロックの方法だけ覚えて貰い、
絞りとシャッタースピードを決めておいてカメラを渡すのが一番楽である。

GR には My Setting を保存しておける機能がある。
例えば、ISO 400, F = 10, SS = 1/125 にして
写ルンです』の設定として保存すれば、
ダイヤルを回して割り当てられた位置に合わせれば、その設定が読み込まれる。
このようにして、試しに撮ってみた。

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GR, Lens: 18.3 mm, 1:2.8

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GR, Lens: 18.3 mm, 1:2.8

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GR, Lens: 18.3 mm, 1:2.8

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GR, Lens: 18.3 mm, 1:2.8

上の4枚はかなり暗くなってしまった(ほぼ黒)ので、Photoshop で明るくした。
SS が比較的速く、絞られているため、暗い場所だとだいぶアンダーになってしまう。

 

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GR, Lens: 18.3 mm, 1:2.8

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GR, Lens: 18.3 mm, 1:2.8

上の 2 枚はそこまで暗くはなかったが、少し明るさを調整した。
のっぺりした印象の絵。特に工夫をしないと面白みのない絵になってしまう。

 

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GR, Lens: 18.3 mm, 1:2.8

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GR, Lens: 18.3 mm, 1:2.8

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GR, Lens: 18.3 mm, 1:2.8

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GR, Lens: 18.3 mm, 1:2.8

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GR, Lens: 18.3 mm, 1:2.8

上の 5 枚は修正なし。
F = 10 まで絞っているため、背景がかなりはっきり写ってしまい、
絵作りとしてはかなり難しくなる。
主役を置くような絵の場合は、背景はボケていた方が主役が際立つ。
背景に草など目立たないものが配置できれば、
そこまで気にならないかもしれない。

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GR, Lens: 18.3 mm, 1:2.8

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GR, Lens: 18.3 mm, 1:2.8

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GR, Lens: 18.3 mm, 1:2.8

上の 3 枚は、少し暗くして、コントラストを強くしてみた。

 

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GR, Lens: 18.3 mm, 1:2.8

この絵を見ると、F = 10 でも意外と柵の後ろの方はボケているなと感じたが、
柵の後ろの建造物は線が単純なせいか、気になってしまう。

 

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GR, Lens: 18.3 mm, 1:2.8

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GR, Lens: 18.3 mm, 1:2.8

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GR, Lens: 18.3 mm, 1:2.8

写ルンです』の条件で固定して撮るのは、だいぶ頭を使うし、かなり難しい。
やはり状況に合わせた条件で撮った方が良いと思うが、
普段は撮らないような絵が出てくるのは面白い。